最近、テレビでも紹介されることの多くなったピロリ菌は、40〜50歳代以上では約80%が菌を保有しているといわれています。このピロリ菌は胃の中でしか生息できませんが、ウレア−ゼ、VacAなどの物質を産生して胃や十二指腸の潰瘍や慢性胃炎、胃がんの発生に大きく関与することがわかり、2000年11月には難治性胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍に対する治療としてピロリ菌除菌療法が認可されるに至りました。
さらに2013年4月から慢性胃炎に対してもピロリ菌除菌療法が認可され、たくさんの方がピロリ菌の検査を受けられるようになりました。ピロリ菌除菌療法を受けるためにはまず初めに胃・十二指腸内視鏡検査を行う必要性があります。ピロリ菌除菌療法をご希望の方は是非ご相談ください。
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図1:みぞおちあたりの痛みのため食事が充分に摂れないと訴えた患者様でした。内視鏡検査で胃を精査したところ、胃の中央に位置する胃角部というところに深い潰瘍が認められました。 |
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図2:最強の制酸剤と呼ばれるプロトンポンプ拮抗薬を処方しましたが、症状は一向に改善しませんでした。お薬を飲み始めてから3ヵ月後に再度、内視鏡を行ったところ、前回観察された胃角部の潰瘍はサイズは小さくなっていましたが、まだ依然として残っていました。 |
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図3:従来の胃潰瘍治療薬では症状の改善はとても望めないと判断し、ピロリ菌除菌療法を実いたしました。1週間にわたる除菌療法は問題なく終了し、その後間もなく患者様の胃の痛みの訴えはなくなりました。除菌療法終了後、1ヶ月を経過したところで内視鏡検査を行ったところ、胃潰瘍は瘢痕組織を残して治癒していました。 |
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胃のピロリ菌感染と胃がんとの関係について、これまでに多くの研究と調査が行われてきました。その結果、ピロリ菌は胃がんと深い関わりがあり、胃がんの発生要因の一つであることがわかってきました。それでは”ピロリ菌を除菌すると胃がんを予防できるのか”という問題についてはどうでしょうか?多くのピロリ菌研究者はこの問題について肯定的な意見を持っているようです。但し、残念ながらピロリ菌除菌で胃がんが予防できるかという確証はいまのところありません。冷静に考えてみれば、がんというものは環境や生活習慣、遺伝など多くのものに影響されて発生するものなので、ピロリ菌を除菌してしまえば大丈夫ですという事はあり得ないわけです。しかしながら、ピロリ菌除菌と胃がんの予防効果について今後の研究成果に大きく期待したいと思います。
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